【うつ病】障害年金遡及請求の結果からわかる申請が難しい理由
うつ病などの精神疾患の場合、闘病が長期にわたることが多いです。
あなたが病状悪化で働くことができなくなり、
障害年金申請を考えているなら、過去の分の障害年金を
遡及して請求できます。
請求すれば誰でも受け取れるのでしょうか?
遡及して請求するのはどのような仕組みなのか、ご案内します。
監修:石井 智子
【保有資格】社会保険労務士 / 年金アドバイザー
【経歴】2018年8月 開業
「うつ病」「双極性障害」などの精神疾患で障害年金を受け取りたい方の手続き代行を「確実に・短い時間で・あなたの体力を減らさない」をモットーに行う。
目次
- ○ 障害とは?
- ○ 障害年金とは?
- ・申請までの手順
- ・提出必要書類
- ○ 障害年金の遡及請求とは?
- ・2つの請求方法
- ・認定日請求
- ・事後重症請求
- ○ 障害年金の遡及請求が難しい理由
- ・認定日(訴求)請求の成否が分かれる①ーカルテの存在
- ・認定日(訴求)請求の成否が分かれる②ー診断書の内容
- ○ 障害年金の遡及請求ー2つの誤解
- ・1つめの誤解 ー 過去の症状悪化の時に遡って年金を受け取れる
- ・2つめの誤解 ー 障害認定日に障害状態であれば年金を受け取れる
- ○ 認定日(遡及)請求についての
疑問がありましたら、LINEでお問い合わせください。
障害とは?
障害年金制度において「障害」とは以下のように定義されています。
1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。
2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家庭内に限られるような方が2級に相当します。
3級
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。
言い換えてみると
「病状のため、日常生活が困難で働くことができない」
状態をさしています。
障害年金とは?
障害年金とは何でしょうか?
病気やけがで働くことができなくなった人が、
生活保障のために受け取ることができる公的年金です。
65歳から受け取ることができる老齢年金を、前倒しで受け取るようなもの
とイメージしてください。
病気の症状によって、前述の通り障害等級が決められて
重症であれば年金額は高額になります。
障害基礎年金と障害厚生年金の2種類です。
障害厚生年金は、障害基礎年金も併せて受け取れるので、
有利な年金となります。
残念ながら選ぶことはできません。
障害の原因となった病気で、初めて病院を受診した日を初診日といい、
初診日に国民年金の被保険者ならば、障害基礎年金を受け取ります。
厚生年金の被保険者ならば障害厚生年金を受け取ります。
申請までの手順
年金事務所や役所で説明を受けた上で必要書類を受け取ります。
年金事務所は、予約が必要です。(予約専用ダイヤル 0570-05-4890)
役所で申請できるのは、初診日に第3号被保険者(会社員・公務員の配偶者)以外の
障害基礎年金申請です。
必要書類を揃えて提出することで受付は終了となり、
後日結果が送られてくるのを待つだけとなります。
申請手順そのものは大変簡単です。
手順が簡単であっても、細心の注意を払わないと
不支給決定になりかねません。
進め方についての詳しい内容は、以下のブログでご案内しています。
提出必要書類
提出書類のうち申請の結果を左右するのは
「受診状況等申立書」
「診断書(精神の障害用)」
「病歴・就労状況等申立書」
以上の3種類です。
「受診状況等証明書」と「診断書(精神の障害用)」は
カルテに基づいて医師が記載します。
カルテの法定保存期間は5年ですから
「受診状況等証明書」と「診断書(精神の障害用)」を
取得できないこともあり得ます。
「病歴・就労状況等申立書」はあなたが自分で
日常生活の様子や働き方を通院期間ごとにまとめて記載します。
障害年金の遡及請求とは?
年金制度上「遡及請求」は存在しません。
年金機構のホームページにも該当する案内はありません。
どういうことでしょうか?
2つの請求方法
請求方法は2つです。年金機構のホームページ等でご確認ください。
「遡及請求」はありません。
1認定日請求
2事後重症請求
認定日請求
障害の原因であるうつ病などの精神疾患で初めて受診した日を
「初診日」といい、
初診日から1年6ヶ月後を「障害認定日」といいます。
障害認定日とは、文字通り「障害の状態を定める日」のことです。
生涯でこの日だけしかないのです!
障害認定日から3ヶ月以内の診断書を提出することで、
障害認定日の翌月からの障害年金を受け取れます。
障害認定日がたとえ10年20年前であっても、
認定日請求は可能です。遡及して請求できるのです。
これが、「遡及請求」と言われている請求です。
障害認定日より1年以上経過している場合には、現在の診断書とあわせて
2枚の診断書を提出します。
認定日(遡及)請求の場合、2枚の診断書の提出によって結果は3つです。
A 障害認定日から現在まですべてが障害状態だと認定され、
次回更新時まで障害年金を受け取る。
B 障害認定日には障害状態ではなく、過去の分は不支給。
現在は障害状態で、次回更新時まで障害年金を受け取る。
C 障害認定日から現在まで障害状態ではないので不支給で、年金権はない。
Cについては、私は年金権が発生しなかった請求結果の経験がないので、
Bの障害認定日の診断書の内容について検討します。
事後重症請求
障害年金の請求は、認定日請求が原則です。
事情があって障害認定日に請求できなかった場合、
その後重症になった時(現在のあなたの状況)に請求するのが事後重症請求です。
障害年金の遡及請求が難しい理由
「認定日請求」が「遡及請求」であることはお判りいただけたでしょうか?
認定日(訴求)請求には時効はありません。
障害認定日がいつであっても提出書類が揃うのであれば
認定日(遡及)請求できます。
では、認定日(遡及)請求が難しいと言われる理由は何でしょうか?
認定日(訴求)請求の成否が分かれる①ーカルテの存在
認定日(訴求)請求に必要な「診断書」はカルテに基づいて記載されます。
カルテの存在が必須です。
カルテはいずれ破棄されるものですが、法定保存期間は5年です。
最後の受診日からカウントします。
5年を超えると、病院ごとの判断です。
うつ病などの精神疾患は長期通院になりがちです。
そのためか、10年くらい保管してある病院も多いです。
一方、5年ですっぱり破棄する病院もあります。
そうなると、障害認定日頃に通院していた病院の最終受診日から5年以内であれば
「診断書」の取得は可能です。
5年を超えて以前のことならば、どんどん可能性は低くなっていきます。
こうしている間にもカルテは破棄されている?と考えると少しこわいです。
「診断書」が取得できない場合に代替の方法はありません。
これが、「認定日(訴求)請求」が難しいといわれる理由です。
カルテがなければ「認定日(訴求)請求」は不可能です。
事後重症請求しかできません。
認定日(訴求)請求の成否が分かれる②ー診断書の内容
現在は障害状態であるものの、障害認定日には「障害状態ではない」
と、過去の分のみ不支給になった診断書は
どのような理由で不支給となったのでしょうか?
不支給となった、私がかかわったすべての
障害認定日の診断書は、症状が軽いと判断されていました。
「障害認定日の頃も症状は重かった」はずの診断書は、
あなたの症状を反映してはいなかったのです。
障害認定日の頃 あなたは障害年金を請求できたはずなのに
請求しなかったのはなぜですか?
そう! おそらく!
・・・・・障害年金のことを知らなかったから・・・・・
ではありませんか?
障害年金の請求のための「診断書」には
うつ病が原因で日常生活に制限があることを書かねばなりません。
その判断の手がかりとなる生活の状況は
他でもないあなたが
伝えて、カルテに記載してもらわねばならなかったのです。
病状を伝えるだけでは障害年金の「診断書」記載には不足なのです。
過去のカルテに書き加えることはできません。
書かれていることの範囲内での記載になります。
当時のあなたも診察した医師も、障害年金の診断書への意識が向いていない
診察であったのだと推察されます。
障害年金の遡及請求ー2つの誤解
1つめの誤解 ー 過去の症状悪化の時に遡って年金を受け取れる
認定日請求には、障害認定日から3か月以内の日付の診断書が必要です。
障害認定日の障害状態を証明する診断書があれば、障害認定日が10年前でも20年前でも
過去の分を遡って受け取ることができる認定日請求は、可能です。
(時効がありますので、認められたとしても5年前の分以降ですが)
そして、障害認定日から3か月以内とは、
「○年前はだいたいこんな症状かなぁ…」などと緩い判断で書かれたものではありません。
「○年○月○日現症」と記載されます。
この年月日は、過去実際にあなたが診察を受けた日です。
カルテに記載されたこの日の内容を基に診断書は作成されますから、
指定の期間に診察を受けていないと、診断書は書けないので、認定日による請求はできないことになります。
障害認定日による請求は、過去の分を遡って請求することができるので、ここに誤解が生じます。
「過去の年金をまとめて受け取れる」という言葉だけが独り歩きをして、
過去の具合が悪くなった時に遡って受け取れると思い込んでしまう人が多いのです。
例えば、あなたがうつ病発症で、初診日が8年半前だとします。
障害認定日である7年前は症状が軽くて、通院しながら働いていました。
そのまま4年が経過した後、3年前に症状悪化で退職した場合を考えます。
この場合、あなたは障害認定日請求をできません。
障害状態を判断するべき障害認定日に、症状が軽くて請求できないのですから、
症状悪化した3年前が請求の時でした。
その3年前の機会を逃したのなら、
今から未来に向かっての事後重症による請求になります。
苦しかった過去の分を受け取りたいと思う皆さんに
「残念ながら」とお伝えしますが、制度上諦めていただくしかありません。
障害認定日以降の症状が悪化した時に遡るのではないのです。
2つめの誤解 ー 障害認定日に障害状態であれば年金を受け取れる
障害認定日に障害状態であることだけでは、障害年金の障害認定日請求の申請は通りません。
ここに誤解があるのですが、
障害認定日から現在まで、継続して障害状態でないと
認定日請求は認められないのです。
認定日に障害状態で、その後症状が軽くなり、フルタイムで働いたのちにまた
悪化して現在には障害状態であるようなら、
障害認定日の請求とはなりません。
本来なら、障害認定日に請求するはずなのですから、継続した障害状態でなければならないのです。
継続してなければならないことが必要なので、
闘病期間が長く、症状に波がある方は、認定日請求が難しくなります。
認定日の頃に障害状態であれば申請が通ると、お考えの人も多いです。
継続していることも必要であることに、お気を付けください。
認定日(遡及)請求についての
疑問がありましたら、LINEでお問い合わせください。
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