障害年金と精神障害者保健福祉手帳どちらが先か
病気やけがが原因で生活に支障があり、働けなくなった時に
障害年金と障害者手帳の公的サポートがあります。
ところが、障害年金と障害者手帳は別の制度のため、
連動していません。
「うつ病」などの精神疾患の人の受け取る
障害年金と精神障害者保健福祉手帳についてまとめています。
監修:石井 智子
【保有資格】社会保険労務士 / 年金アドバイザー
【経歴】2018年8月 開業
「うつ病」「双極性障害」などの精神疾患で障害年金を受け取りたい方の手続き代行を「確実に・短い時間で・あなたの体力を減らさない」をモットーに行う。
目次
- ○ 障害年金とは
- ○ 障害者手帳には3種類ある
- ○ 精神障害者保健福祉手帳とは
- ○ 障害年金と精神障害者保健福祉手帳の違い
- ・認定される病気の範囲
- ・申請可能期間
- ・更新
- ・障害状態
- ・申請にかかる費用と手間
- ○ 障害年金と精神障害者保健福祉手帳どちらが先か
- ○ 精神障害者保健福祉手帳を障害年金よりも先に取得する場合
- ・精神障害者保健福祉手帳の取得を先にするケース
- ○ 障害年金を精神障害者保健福祉手帳よりも先に申請する場合
- ○ まとめ
- ○ 障害年金と精神障害者保健福祉手帳についてLINEでのお問い合わせ
障害年金とは
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが
制限されるようになった場合に、生活保障として
20歳~64歳(原則)の人が
受給要件を満たすことで受け取ることができる年金です。
老齢年金や遺族年金と同じく障害年金も公的年金のひとつです。
障害者手帳には3種類ある
障害者手帳は3種類があります。それぞれ別の制度で運用されています。
1 身体障害者手帳
身体の機能に一定以上の障害があると認められた場合に交付
2 療育手帳
児童相談所 又は 知的障害者厚生相談所において
知的障害があると判定された場合に交付
3 精神障害者保健福祉手帳
一定程度の精神障害の状態にある場合に交付
3種類の障害者手帳は一人一種類というものではありません。
必要に応じて2種類を取得することもできます。
その場合にはそれぞれ申請します。
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳は、「うつ病」などの精神障害のため、長期に渡り
日常生活や社会生活に制約がある人を対象としています。
病気の人をサポートするための制度ですから、
精神障害者保健福祉手帳取得によるデメリットはありません。
障害年金と精神障害者保健福祉手帳の違い
同じ病気によって受けられるサポートであるにもかかわらず、
障害年金と精神障害者保健福祉手帳は異なる制度のため
連動していません。
異なる点は何なのか?
理解した上で、あなたにとって必要な
最大のサポートを受けてください。
認定される病気の範囲
障害年金と精神障害者保健福祉手帳の
一番大きな違いは、認定される病気の範囲です。
障害年金で認定される精神疾患は、一部が除外されています。
精神障害者保健福祉手帳で認定される精神疾患は
てんかんや発達障害を含み「全ての精神疾患」です。
障害年金に該当しない病気はこちらで確認ーP58をご覧ください
申請可能期間
精神障害者保健福祉手帳を受けるためには
その精神障害による、初診日から6ヵ月以上経過していることが必要です。
障害年金は、同じく初診日から1年6ヵ月以上経過していなければ申請できません。
いずれも申請までに必要な期間が、経過してさえいればいい、
ことにはなりません。
精神障害者保健福祉手帳なら6ヵ月、
障害年金なら1年6ヵ月と
決められている期間は、病状経過観察のために必要な期間です。
通院が前提です。経過を観察しなければ、
障害状態であるかどうかの判断できないのです。
数分の診察で薬をもらうだけだから、必要ないなどと
自己判断して、通院を中断するなら、医師は判断をつけられません。
精神障害者保健福祉手帳の取得も
障害年金の受給も遠のきます。
更新
精神障害者保健福祉手帳の更新は2年毎です。
更新の時に手帳申請用の診断書を作成して提出します。
手帳用の診断書作成は有料で、3,000円から8,000円位で
病院ごとに異なります。
更新の際に障害年金を受給しているなら、
障害年金の年金証書を提示することで代用してもらえます。
診断書作成費用を省けます。
精神疾患が理由でで受給する障害年金での更新は
その都度決まります。1年から5年の範囲です。
障害状態
【障害年金に該当する状態】
1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。
身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方
(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲が
ベッドの周辺に限られるような方が、1級に相当します。
2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、
労働によって収入を得ることができないほどの障害です。
例えば、家庭内で軽食を作るなどの軽い活動はできても、
それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、
入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家庭内に限られるような方が2級に
相当します。
3級
労働が著しい制限を受ける、又は、労働に著しい制限を加えることを必要とする
ような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については
制限がある方が3級に相当します。
【精神障害者保健福祉手帳の障害状態】
1級
精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級
精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、
又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級
精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、
又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
障害年金と精神障害者保健福祉手帳で定める障害状態は
比べると判りますが、精神障害者保健福祉手帳での障害状態の方が
範囲がゆるくなっています。
申請にかかる費用と手間
ひとりで申請する場合の費用です。
【精神障害者保健福祉手帳申請の場合】
・手帳用の診断書料 3,000円~8,000円くらい(病院によって異なる)
・役所への訪問回数2回
【障害年金申請の場合】
・受診状況等証明書 1,500円~8,000円くらい(病院によって異なる)
⇒不要な場合もあり、複数枚必要な時もある
・診断書 5,000円~15,000円くらい(病院によって異なり、40,000円の病院もある)
⇒1通は必要で、複数枚必要な時もある
・年金機構、もしくは役所に少ない場合でも3回、多いと10回以上になることもある
障害年金と精神障害者保健福祉手帳どちらが先か
障害年金と精神障害者保健福祉手帳、どちらも同時に必要だと
なった場合「同時申請」になります。
「同時申請」に何かのメリットがあるのか
というと、デメリットもメリットも何もありません。
それぞれ別の制度なので、別々の診断書が必要になり、
申請の窓口も異なります。
では、障害年金と精神障害者保健福祉手帳の
どちらかを先にすると何かのメリットがあるのでしょうか?
次頁以降のタイトルにまとめます。
精神障害者保健福祉手帳を障害年金よりも先に取得する場合
メンタル不調だと感じて通院を開始し、
回復がないまま6ヵ月が経過したなら、医師の判断により
精神障害者保健福祉手帳の取得が可能です。
障害年金の受給権は、初診日より1年6ヵ月経過の
障害認定日以降に申請が可能です。
そのため、
現在通院中の病院より前に通院歴がある場合を除き、
精神障害者保健福祉手帳の取得時期が先に来ます。
精神障害者保健福祉手帳取得の診断書代も病気を抱える人にとっては
負担になりませんか?
精神障害者保健福祉手帳のメリットが明確にある人を除き、
障害年金を先に受給すれば
精神障害者保健福祉手帳申請のための診断書は不要になります。
年金証書を受け取ってからの検討でも
精神障害者保健福祉手帳の取得は間に合う場合もあります。
精神障害者保健福祉手帳の取得を先にするケース
精神障害者保健福祉手帳の取得による
1番のメリットは「減税」です。
当然納税している人が対象です。
あなたが、
・厚生年金加入会社員の扶養である配偶者、ご家族
・うつ病などの病気があるが収入もあり、納税している
ならば、精神障害者保健福祉手帳の取得はメリットが高いです。
障害年金受給より精神障害者保健福祉手帳の取得が先になってもよいケースです。
減税効果が、診断書の代金より高いからです。
精神障害者保健福祉手帳の2番目のメリットは
手帳の取得によって就労支援施設や障害者枠での会社勤務ができることです。
これは、会社側の配慮があれば働くことが可能な人の場合、
手帳を取得し、就労支援施設で働き、その後1年経過して障害認定日に
障害年金を申請することで無駄な時間を使わなくて済みます。
障害年金を精神障害者保健福祉手帳よりも先に申請する場合
障害年金は生活保障としてリアルにお金を受け取れます。
ですから障害年金は遠慮することなく条件に該当するならすぐに
申請するべきです。
精神障害者保健福祉手帳の取得により受けられるメリットは
「本来納めるべきが減額になる」ことです。
お金が増えるわけではありません。
例えば、うつ病により働くことができない状態の人は
収入がありません。当然税金を納めているわけではありませんから
減税を目的とした精神障害者保健福祉手帳の取得は意味がないことになります。
加えて働くこともできないのですから、
就労支援施設などでの働きかたもできないわけです。
その時は、障害年金の申請だけで良いと思います。
少し症状が軽くなって少しだけ就労支援施設で働いてみようかと
考えるような状態になった時に、年金証書があれば
診断書はなくとも精神障害者保健福祉手帳の取得は可能です。
障害年金を受給しているなら、手帳は後からでいいわけです。
まとめ
障害年金と精神障害者保健福祉手帳申請の手続きがまだで、
どちらを先にするといいのでしょう?
あなたの置かれている状況で、
精神障害者保健福祉手帳取得時期が変わりますが、
障害年金申請を中心に考えてください。
障害年金申請可能時期前に精神障害者保健福祉手帳申請の時期が
来るのであれば、必要に応じて手帳の申請が先になります。
手帳のメリットがあまりない場合は
障害年金の年金証書があれば費用も掛からず手帳申請ができるので
障害年金申請のことに集中なさってください。
障害年金と精神障害者保健福祉手帳についてLINEでのお問い合わせ
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社会保険労務士が直接お答えいたします。
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